令和3年9月定例会代表質問

2021年09月24日

代表質問の全文(一括質問)と知事答弁の概要を掲載いたします。 長文となりますが、ご覧ください。

北葛城郡区選出の清水です。
議長のお許しを頂きましたので、日本維新の会を代表して質問をさせていただきます。
質問の前に、
昨年の1月から流行が始まった新型コロナウイルス感染症は、現在、第5波の波にのまれ、大阪など都市部を中心に爆発的な勢いで感染者が増加し、本県でも感染者が急増したことにより9月30日まで緊急対処措置が延長されています。
この間1年8カ月の長きにわたり、弛まない努力をしていただいています医療関係者の皆様、介護事業関係者の皆様、奈良県庁をはじめ行政機関の皆様に心より感謝を申し上げます
現在の感染状況を踏まえますと、感染者の多くがデルタ株に感染していると考えられ、家庭内や職場で感染を広げる可能性があり、デルタ株は入院リスクが高いとされており、一層、細心の注意が必要です。
9月22日現在(の数値に変更する)、146名がお亡くなりになり、感染者の累計は15,489人で14,852人の方が治癒されていますが、治癒された方の中には後遺症で辛い思いをされている方もいらっしゃいます。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、療養中の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

それでは、①西和医療センターの移転・再整備について、②奈良県大規模広域防災拠点の整備について、③総力戦で挑む防災・減災対策について、荒井知事が特に力を注いでおられる3点について一括して質問いたします。

まず、西和医療センターの移転・再整備について、知事に質問をいたします。

県では現在、西和医療センターの移転・再整備を検討しておられますが、「王寺駅周辺地区のまちづくり」にかかる王寺町とのまちづくり連携協定の枠組みの中でも話が進められており、西和医療センターは現地での建て替えか、移転する場合は、JR王寺駅南の電車留置線内を移転候補地として位置付けられ、現在のところ2つの案で、再整備の可能性の検討が行われていると聞いております。
西和医療センターは昭和54年4月1日に、「県立三室病院」として開院し、西和7町の基幹病院としての役割を果たしており、また、コロナ感染禍にあっては発熱外来を第2駐車場に整備され、感染症対策にも大きく貢献をされています。
現在、例えば令和2年度の診療実績をご紹介しますと、主要な診療科では西和7町と香芝市・広陵町からの患者さんが70~80%を占めております。
まさに、西和医療圏の住民にとって、命綱のような重要な病院です。
しかし、一部は建築後42年が経過し、施設の老朽化も進み、耐震性についても、本館及び南病棟4階の最小Is値が0.29であり、震度6強から震度7の地震で倒壊または崩壊するおそれがあります。 地震発生時や水害時こそ、公立病院等の医療提供体制がしっかりとして災害医療に対応できることが求められると思いますが、このような現状では、外来や手術室、病棟が使用停止状態となり、この重要な病院の機能が失われる可能性が非常に高いと思われます。
地震や水害の多いわが国において、災害医療の拠点となるためには、十分な耐震性能と水害に対応できる機能を持つことが必要であり、また、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえると、新興・再興の感染症にも対応できるトリアージスペースの確保が必要です。
さらに、高齢化の進展に伴い、緊急入院等が増加することも考えると、SCU等の集中治療室の強化、救急医療機能の強化が必要です。
私は、以上のような認識を持っており、西和医療センターの再整備には、北葛城郡区選出の県議会議員として全面的に賛同しております。
しかし、現在の西和医療センターの敷地は傾斜地にあり、余剰地に建物を建てて、病院の運営を現地で継続しながら、現地建替を行うことは、令和2年度西和医療センターあり方検討業務でも指摘されている通り非常に難しいと思われます。
一方、JR王寺駅南側への移転は、それ以上に数多くの課題が生じると思っています。
令和2年度西和医療センターあり方検討業務の成果品について、一部を開示請求させて頂きました。
その結果、分かったのが、病院の移転建て替えを行う場合の適正敷地面積として、住居系地域に建築する場合で地下駐車場を作る場合の敷地面積が13,056㎡、平面駐車場を作る場合の敷地面積が17,556㎡、また、商業地域に建築する場合で地下駐車場を作る場合の敷地面積が7,662㎡、平面駐車場を作る場合の敷地面積が12,162㎡必要であるということです。
将来の建て替えなどに対応するにはさらに余剰スペースが必要となりますし、併設されている看護学校は、そもそもこの面積に含まれておりません。
王寺駅の南側には、約2.7haの大きなJR西日本の電車留置線がありますが、これを移転することは容易ではありません。
電車留置線は現状、使用されているものであり、移転にあたっては、代替施設の整備が必要となりますが、これを整備することになれば、非常に多額の費用が必要となります。(噂では、150億円以上が必要との事です。)
先日、王寺町議会令和3年6月定例会においても、議員からの一般質問「西和医療センター誘致を含め、王寺駅南側のまちづくりについての今後の展望について」に対して、平井王寺町長は次のように答弁しています。
要約して申し上げます。すなわち、
・県が策定した「奈良新『都』づくり戦略2021」の中で、王寺駅南側を西和医療センターの移転先候補地として位置づけて、その具体の検討を進めていると聞いている。
・本年5月末現在の状況は、王寺町と県が協働で電車留置線基地の「一部活用」の可能性について、JR西日本と協議しながら検討を進めているところである。
・上手くいけば電車留置線全体、2.7ヘクタールをまちづくりに活用できないかと考えていたが、今年の1月の段階で聞くと、知事とJR西日本とで協議も持たれたようだが、その中では、JR西日本の意見として、全面移転はさすがに、諸般の事情で困難だと言われている。
・従って、用地のどこまでの部分をまちづくりに提供して頂けるのか、それについてどのような条件があるのかについて、県を通じて交渉を行っているというのが現状である。
・県では、西和医療センターの現地での再整備は病院機能が停止すること、あるいは大幅な診療制限が必要になることから、移転を視野に入れて検討が進められていると聞いている。
・令和2年5月に、地元の西和7町長から知事に対し、県が実施している西和医療センターのあり方検討に関する要望を行った。この要望の際に、県から西和医療センターの活用を含めた西和地域における広域的な課題について、「県と西和7町との協議の場」を持ちたいという提案を頂き、その「協議の場」が設けられ、これまで3回開催してきた。
・また、県においては、現在、西和医療センターに求められる医療機能や施設規模の検討と併せて、王寺
駅南側の町営駐輪場を中心に移転候補地の検討が行われており、令和3年度中に新病院の基本方針をまとめるとともに、令和5年度までに基本計画を策定される予定と伺っているところである。
・これらのことを踏まえ、駅南側エリアについては、町としては、駅前広場の拡張を最優先課題としながら、西和医療センターが王寺駅周辺に移転することを前提として、広域で行政サービスを集約するなど、広域拠点としての都市機能の集約を併せて目指していきたい。
以上のような答弁でした。
また、同議員から「電車留置線の一部と町営駐輪場とを活用して西和医療センターを移転整備するのは、場所的に狭いということはないのか」という再質問に対し、町長は、
・電車留置線の南のほうに保線区、線路の保守や管理のためのセクションや、関連する民間の業者使用エリアもある。そうしたヤードをどこまで病院や町のまちづくりに提供していただけるのか、実は、いまその調整を行っている。
と、答弁しています。(要約していますので、正確な内容は公表されています王寺町議会議事録をご覧ください。)
R3.9 代表質問医療1-1
関係機関からの回答を得て作成したものではありませんので、あくまでも参考に見てください。
この写真からもわかると思うのですが、右上の西和医療センターの敷地と建物配置図を見ていただきたいのですが、現在の敷地面積は約3.0ha、建物延べ面積が約24,000㎡あります。
どう計算しても左下の王寺駅南電車留置線南側部分の一部だけで建設ができるとは思えません。
資料1-2の写真をご覧ください。R3.9 代表質問資料1-2(保線事業者資料範囲の写真と駅南広場西駐輪場の状況です。)
ご覧のように、電車留置線のうち、電車を留置するのに使用されていない2線についてJR西日本から提供頂くとすると、建物の建っていない場所だけでは、約1,000㎡しかありません。建物を除却するとしても約3,500㎡程度、久度大橋から西公園までの奥行150?程度で、かなり細長い形状の土地となります。
また、施設を動かそうとすると、電車留置線と同じで、適切な場所に代替施設が必要となり、非常に多額の補償費が必要となります。
ご承知のとおり、JR大和路線、和歌山線の王寺駅発始発電車は午前5時過ぎ、終電は午前0時30分頃であり、保線作業は深夜の4時間ほどしかないため事前準備作業は昼間に行うこととなるため、資材の搬入に対する騒音などを考えれば移転先の作業場所も限定されます。
資料1-3の写真を出す。R3.9 代表質問資料1-3(王寺駅南広場西駐輪場の北側に1,000㎡ほどの線路を含む平地の写真と西駐輪場の現況写真)
王寺町長が言及している王寺駅南広場西駐輪場は、資料1-1の表に記載のとおり年間利用者が約336千人と非常に利用者の多い駐輪場で、利用者は王寺町民だけではなく、河合町、上牧町、三郷町、斑鳩町の住民が約7割程度と聞いております。
そして、南駐輪場の利用者は、表のとおり年間に約118千人であることから、王寺駅南広場で再整備が必要となる自転車等駐輪場は、年間約454千人の利用者を想定して建設しなければならなくなり、当然のことながら、代替施設がJR王寺駅南広場に接して必要となります。
現状の写真を見ていただいて、どこにそのような余裕があるでしょう。甚だ疑問に思います。
また、王寺町が王寺駅南広場西駐輪場の用地提供にあたり、当然、この施設は構外移築の対象となりますから、用地費及び再建築費用などの補償費を奈良県が王寺町に対して支払うことになると思われます。
これらのことから、王寺駅南側への移転建替は、建物の費用だけでなく、用地費、補償費が極めて多額に上ると思われますが、現在、それらのことは十分に検討されている状況では無いと考えます。
また、以前にも指摘いたしましたが王寺駅周辺は、洪水浸水想定区域であり、大和川ハザードマップのとおり降雨状況により3mから5mの水深で水没する可能性があります。
昭和57年の大和川大水害の際には、私は30歳でした。
当時、王寺町役場で下水道事業の担当者として、公共下水道事業による雨水計画と流域下水道関連汚水計画の都市計画決定に係る全ての関係機関との協議を終えて、都市計画決定の告示を行った日が、皮肉にも昭和57年8月1日でした。
この日に前日からの雨(24時間降雨約160mm)により王寺駅を中心に90ha以上が被災しました。翌日は晴天であり、多くの方が家財道具を道に出して天日干しをされるなど片づけに精を出されていました。
ところが翌3日には同規模の降雨(24時間降雨約155mm)により、1日置いて、またしても王寺駅周辺の広い範囲が水没をするという被害を受け、片づけ途中の家財道具(畳、家電製品、家具)が流されて水路を塞いでしまい、この復旧に私自身も行政職員として数日に亘って苦労したことを今でも鮮明に記憶しています。
大和川大水害の脅威は過去の話ではありません。
最近でも、平成29年10月の台風第21号災においても、奈良市の24時間降雨量は最大で196.5ミリに達し、国土交通省の藤井観測所では計画高水位を上回り観測データが欠測、王寺水位観測所でも計画高水位を上回る8.14mという過去最大の水位を記録しました。これは、昭和57年大和川大水害の際の最大値を凌駕しており、王寺町においても本町地区を中心に広範囲で浸水被害が発生しました。水害を甘く見てはならない、という教訓であります。
加えて、JR王寺駅周辺は、国土地理院の活断層マップを参照しますと、大和川断層帯に極めて近接していると思われます。建物自体をいくら強化していたとしても、直下型地震に見舞われた際には、入院中の患者の安全を絶対的に確保できるか、また、道路など、周辺地域のアクセスの確保は大丈夫か、など、多くの懸念が生じます。
このようなことを踏まえ、知事に質問します。

西和医療センターについては、移転建替を行う場合は、JR王寺駅南側が候補地とされているが、現在は電車の留置線として利用されており、事業用地の確保が非常に困難であるとともに、計画場所の土地単価は高く、用地費や移設補償費などが多額になると思われます。
また、同地は洪水浸水想定区域であるなど、防災の観点からも問題のある場所だと考えます。このような状況を踏まえると、西和医療センターの移転候補地の見直しが必要と考えますが、いかがでしょうか。

【知事答弁概要】
奈良県西和医療センターは、西和地域における中核病院として、地域医療を支える重要な役割を果たしています。しかしながら、施設の老朽化や耐震化の課題があることから「県立病院機構第2期中期目標・中期計画」において、今後のあり方を検討することとしています。その中に、再整備というテーマが入っています。
あり方の検討では、再整備の場所につきましては、現地建て替えと移転建て替えの両方を検討しています。
現地建て替えでは、敷地の制約から、工期を2期に分割するとともに、造成や擁壁の工事が必要となります。このため、病院機能にできるだけ影響の少ない、効率的な建て替え手順を検討している段階です。
移転建て替えでは、今後高齢化により医療のニーズがさらに高まることを踏まえると、公共交通機関のアクセスが良く、商業施設や行政機関等の都市機能が集積しているJR王寺駅の南側が利用していただきやすいと考え、移転候補地としています。
移転建て替えの現在の検討状況ですが、最近耳寄りな進捗がありました。移転候補地には、王寺駅南側にある電車留置線基地を含みますので、JR西日本にご協力いただき、この敷地をどの程度利用可能か、詳細を検討していただいています。JR西日本は、大変親切で、前向きな対応をしていただいているように感じています。これまでの事務レベルの検討によりますと、基地機能の一部について具体的な移転計画が固まりつつあり、実現可能性が高まってきています。その場合は、電車留置線の移転を含まないで、用地を捻出できることになります。
また、電車留置線基地南側の駐輪場などの王寺町所有地についても移転候補地に含んでおり、代替施設の確保や費用の負担について、今後の重要な検討課題と考えております。これらの検討が進めば電車留置線を移設することなく、自由通路を渡ったJR王寺駅の南側に比較的低価格での用地取得による病院立地が可能となり、駅前の便利なところに、自由通路から直接病院に入れるような施設が出現することになります。また、現地に私も行きましたが、周りを見渡しますと、この地区は、高さ制限が厳しいことがわかりました。北や西にはずいぶん高いマンションが建っています。10階以上だったと思います。町の権限ですが、高さ制限が緩和されれば、相当大きなビルが建つことが可能だと推察いたします。まず立地が決まったときの、高さ制限の緩和がどの程度までできるのかがひとつの課題になると思います。
次に災害への備えについてですが、議員お述べのとおり、王寺駅南側は、大和川洪水浸水想定区域となっており、大和川が氾濫した場合、3mから5mの浸水が想定されています。似たような例として、日産スタジアムの側の暴れ川である鶴見川の近くにあり、駐車場全てが遊水池となっている。川が増水するとそこに導水する合理的な仕組みとなっています。近くの新横浜駅に水害を及ぼさない工事がなされています。
想定浸水がある地域に立地している他の災害拠点病院の対策を参考にしつつ、機械室の高層階への配置や、防水板、防水シャッター、被災時用エレベーターの設置、地上地下遊水池の整備などにより、低層階が浸水しても病院機能自身が阻害されないような浸水対策について詰めているところです。もしその地域が浸水したとしても、王寺駅からの自由通路により、病院の中層階以上の機能があれば駅からは自由というような病院の設計も検討しています。
併せて、地震の被害を最小限に抑えるため、建物を免震構造とするなど、災害時においても医療機能が維持できるよう検討しているところです。
西和医療センターの再整備については、地元住民の皆様や、王寺町をはじめ西和7町のご理解とご協力が不可欠です。西和7町が要望されているのは、交通至便なJR王寺駅南側に新病院が設置されることでございます。西和地域全域の皆様が将来に渡って適切な医療が受けられるよう、提供する医療機能の内容の充実とあわせて、今後さらにJR王寺駅前病院設置の検討を深める必要があると思います。西和7町が、このような要望を出されたことは、私どもがさらに検討を進める上での大きなエネルギーになっていることは確かでございます。

【議員再質問】
王寺駅南側敷地について、JR西日本から良い回答があったということだが、南側の2線は鉄道の保線業者が使用しており、これより北側は洗車ヤードとして使用されている。こういった場所も留置線として含まれていると理解している。今後、JR西日本からどれだけの場所を提供いただけるのか不明であり、今後の移設にかかる補償費がどれだけかかるのかも今後の協議の内容だと思う。また、西駐輪場も近隣地に再整備をしなければならない。この場所がどこになるのか王寺町にとって大きな問題である。このようなことを踏まえ、一点確認させていただきたい。西和医療圏において、西和医療センターは基幹病院として位置づけられているが、1市8町に補償費や用地費を含めた費用について、大きな費用がかかるため、一定の支援を県から求めるのか、基本的な考え方について伺いたい。

【知事答弁】
現在、西和医療センターは三室という場所にあるが、建設当時、敷地の約85%は西和7町から提供を受けた経緯がある。今回についても、同様のことがあると嬉しく思う。西和7町に三室の用地を返し、代替として新たな用地を提供いただけると県としては大変ありがたいと考えているが、そうはいかないのではないかとも思っている。また、JR西日本の用地については、留置線を移転するのは大変費用を要することが分かっている。そのため、線路を移設しない方法もしくは南側のあまり使用していない線路が移転可能か交渉しているが、JR西日本とは大変意思疎通が図れており、ありがたく思っている。このような暖かい関係を築けている際に、方針が固まっていくのではないかと思っている。西和7町との関係ですが、7町がどう考えているかわかりませんが、昔のことを思い出してくださいぐらいいってもよいかもしれないが、やはり王寺町が一番得をする、利益があるのは王寺町なので、しかも駅南側に広場の整備もできることになるので、主導されて、また力のある議員から王寺町に主導するよう、働きかけをいただけるとまとまる可能性もあるのではないかと思うため、そういった働きかけは歓迎したいが、それがないとしないと言うつもりはない。三室に行ったときのように、よい関係で進められればと思う。その西和7町が王寺駅南側に作ってほしいと行っているので、そのような機運が醸成されれば、なかなか西和7町、JR西日本、県、議員の皆様の意見が一致することはなかなか無いが、今回は一致する可能性があるので実現を図っていきたい。

【議員再質問】
もう一度質問の方向を変えて質問をさせていただく。現地の状況から判断して、先程の答弁で街の高さ制限を変える、いわゆる地区計画を変更することは、一つのやり方として考えられると思う。ただ、前例として40mまでしかできないため、限度があると思う。一番の課題は、JR西日本がどれだけの条件を提示してくるのかわからないので、現段階で明確な反対をすることはしないが、非常に困難が生じるであろうことが第1点目としてある。
以前にも質問させていただいたが、過去の水害を経験しているため、仮に自由通路から病院に入れたとしても3~5m浸水していると、道路が浸水しJRは使えない中に病院がポツンとある、今年の8月の水害で佐賀県の順天堂病院がまさにその状況に置かれ、病院機能を果たさなかった実例もある。もし王寺駅南側につくるのであればきちんとしたことを考えなければならない。先程、地下に遊水池等の答弁があったが、10年に1回の雨量を想定してしか水路は作られていないので、それを超える雨量で溢れることは明らかで慎重に対応いただきたい。
もう一つは、来年の4月1日から王寺町は義務教育学校を開校し、小学校2校が廃校となる。JR王寺駅からそう遠くない。さらに、今年の7月末で西大和の大型商業施設が営業を廃止され、その後まだ事業者が決まったとは聞いていない。時代の流れとともにいろいろなことが起こるので、固定観念にとらわれずに、将来を考えるとこれが望ましい形だと考え、建て替えの可能性を後世に課題を残すことのないように再度のご検討をお願いしたいことを意見として申し上げる。

【知事答弁】
今、議員がお述べになられた王寺小学校の跡地について、令和元年度12月王寺町議会において、文化財発掘調査に10年かかると教育長が答弁されています。10年待ってからとなると時代がさらに変わることも予想されるので、候補地として考えていません。
また、河合町の大規模商業施設跡地については、所有者が土地利用の方向性について、検討中であると聞いており、候補地として考えていません。
王寺駅南側の立地環境について、救急車も進入するため道路のアクセスも必要で検討を進めているが、検討が進み、まとまった段階でお示しできるようにしたい。

【議員ご意見】
いずれにしても慎重なご検討をお願いしたい。

次に、奈良県大規模広域防災拠点の整備について、知事に伺います。

令和元年9月定例会、令和2年2月定例会、令和2年6月定例会に引き続いて、4回目となりますが、五條市内に建設予定の大規模広域防災拠点の整備について質問をいたします。
令和元年9月の代表質問では、本計画における盛土量が大量であり、大和北道路の残土利用、リニア新幹線残土の利用など、遠方からの搬入は現実的ではないことを指摘致しました。
また、令和2年2月定例会の一般質問では、事業手法について伺い、交付税措置率、すなわち地方交付税への算入割合が高い緊急防災・減災対策債の適用を予定しているとの答弁を頂きました。
そして、令和2年9月定例会の代表質問では、早期完成を目指して、2000m級滑走路を改めて、より現実的な計画にすることについて問いましたが、知事の答弁内容は東日本大震災における空路の重要性から最終計画として2000m級滑走路を整備するとのことでありました。
本年7月に行われました令和4年度政府要望資料などによりますと、この防災拠点の整備にあたっては、段階的に整備を進めることとされており、Ⅰ期は、平場を有する約5haの防災拠点を整備、Ⅱ期は、自衛隊などの回転翼機の運用を想定した600m級滑走路を有する大規模広域防災拠点として約46haを整備し、Ⅰ期、Ⅱ期を合わせて概算事業費は約240億円を見込み、Ⅲ期は、2000m級滑走路を整備し、累計約720億円と、多額の事業費を必要とするものです。
加えて、この大規模広域防災拠点は、敷地や施設面積が広大であり、滑走路のメンテナンス、大規模盛土による法面の維持、敷地内部・外部の防災調整池の浚渫など維持管理に要する費用は、県の他の施設と比較しても非常に大きなものとなると考えますが、こうした費用については算定された資料はなく、整備基本計画にも反映されていません。
また、県の計画では、Ⅰ期、Ⅱ期の用地としてプレディアゴルフ場を活用する予定ですが、Ⅲ期の用地はゴルフ場の土地以外に、相当な面積の民有地等を買収する必要があります。
本事業は土地収用法の対象にはならないと考えられるため、用地買収に反対の地権者が敷地の一部にでも残れば、虫食い状態になり、収用手続きなど、これを法的に解消する手段がないため、事業の推進に赤信号が灯ります。現状の感想では、大変な事業に手を出している印象を私は受けています。
知事は一貫して、この防災拠点を整備する際の財源として、緊急防災・減災事業債を活用すると主張しておられますが、この事業債は令和7年度までとなっている一方で、防災拠点の整備は非常に長い期間を要すると思われ、令和7年度で完了するのは不可能です。
令和3年9月16日の新聞記事には、約20年間に及ぶ長期間を「緊急防災・減災対策債の適用」を武田総務大臣に要望したとの記事がありましたが、その内容は非公表でありますが、22日の小村議員の代表質問に対する答弁では好感触であったと答えられています。
このようなことを踏まえて、改めて、次の項目について知事に伺います。

本年7月の政府要望資料等によりますと、大規模広域防災拠点の整備については、2000m級滑走路を備えるⅢ期整備までに累計約720億円の事業費を要すると想定されており、事業期間も令和7年度まで延長された緊急防災・減災事業債の事業期間を超えることになると思われますが、どの範囲まで、緊急防災・減災事業債が活用できると考えておられるのでしょうか。

【知事答弁概要】
最近頻発している地震や異常気象による風水害などの大規模災害や、近い将来発生が確実視される南海トラフ巨大地震の発生時に備え、救助要員の集結、救援物資の集積・配送などに、優れた防災機能を有する広域防災拠点の整備が是非とも必要であると考えています。
2000m級滑走路を有することで、固定翼機による夜間や雨天時も含めた赤外線捜索監視装置が活躍することが可能です。迅速かつ正確な初期の情報収集が大規模被害には何よりも大事です。それを中央の災害対策本部、官邸に即時伝達することが必要です。また、災害の規模が明確になった直後の初動救助・救難の時期に、大型輸送機の使用により、大規模な人命救助活動や避難者への確実な物資、医療の支援が可能となります。
この初動の活動が大規模であれば大規模災害にも対応できるということです。これがないと死者等の被害が大きく跳ね上がるということが、東日本大震災やその他の災害で分かってきています。
議員お述べのとおり、整備に要する財源については、事業費への充当率が100%、その70%が国から地方交付税として交付される大変有利な地方債である「緊急防災・減災事業債」を充当することを考えています。
残りの3割については県の負担になりますが、財源としましては第二阪奈道路、県の道路公社をNEXCOに売却したときの収入が約280億円ありますので、その一部を充てることで十分と考えています。従いまして、その財源と国の財源を合わせますと、720億円はご心配されるには及ばないというような財源措置となっています。
「緊急防災・減災事業債」が適用されることを固めていかなければいけない時期でしたので、本年7月に熊田総務副大臣に要望を行いました。その際「起債を利用していただく方向で相談していきたい。総務省も一緒に考えていく。」との温かい言葉がございました。その後、総務省地方債課長と、今後の予算措置について具体的な適用の調整を進めています。
その後さらに、先週9月14日には、私から武田総務大臣に対し、来年度着手する事業への「緊急防災・減災事業債の適用」に加え、「長期にわたる当事業への継続的ご支援」の要望をさせていただきました。大臣からは、「やりましょう」と力強いお言葉を頂戴したうえ、長期にわたる当事業への継続的支援についても、「知恵を出していきましょう」との温かいお言葉もいただきました。黒田事務次官からも、5年間の緊急防災・減災事業という制度になっているため、20年間にわたる工事を今の時点で全部適用するということは言えないが、「この5年間で知恵を出していきましょう」と、20年間の事業の頭は入れてもらえるということになっています。
この緊急防災・減災事業債の制度自体は、東日本大震災の時に新設されました、5カ年期限の適用となっています。長期にわたる本事業への継続的支援の奈良県の戦略ということですが、なるべく早期に事業の実績をあげていくことが大事かと思います。2000mに向けての事業の実績をとにかく積み重ねるということが大事かと思います。また5年後の制度継続に向けて、政治的な努力を積み重ねることが必要だと思っています。
今後とも、国の強力なご支援は必要ですので、また、国は2000m級滑走路の意味はあるということを認めていただいてますので、事業費720億円の大規模広域防災拠点の整備を着実に進めていけたらと考えています。

【議員再質問】
奈良県大規模広域防災拠点の維持管理費用について、別途基金を設けるなどのお考えをお持ちなのかどうか。

【知事答弁】
防災拠点の維持管理については、和歌山県と三重県の共同運用の協定について検討しており、費用についてはまだ入っていないが、共同運用するということは、いざとなった時には、和歌山県、三重県の海岸べりの被害者も救出することになることから、いくらかの費用負担は期待できると思っています。
国の建て付けでは、紀伊半島全体に役に立つようにということになっており、国からどのような補助がでるかは分かりませんが、奈良県だけのためではなく紀伊半島全体の防災対応という観点から国の助成・交付金などは探っていきたいと思っています。
この防災拠点の滑走路は長さが2000mあるため、平時の利用についても考えられます。緊急防災・減災事業債を利用した平時の利用ということになるため、大きなことはまだ言うべきではないと思っていますが、平時の利用は地域振興などいろいろなことが可能になってくると思います。そうなると、インフラの維持整備というのは別の観点からの知恵はいると思いますが、知恵をこらして、防災の観点からは国の力をいただく。また近隣の三重県、和歌山県の支援も入れる、地域全体の地域活性化の運用についても、奈良県だけでなく近隣の関係者、民間団体との協力という点も、まだ考えてはいませんが可能性は十分あると思っています。

最後に、総力戦で挑む防災・減災対策について、知事に伺います。

先ほども述べました昭和57年の大和川大水害以降、大和川総合治水対策事業を大和川上流域の24市町村と国と県で進めていただいておりますが、市町村の取組にばらつきがある等の問題があることを知事はかねてより指摘をされており、平成29年10月の台風第21号による水害発生により、一向に進まない大和川総合治水対策事業に加えて、平成の緊急内水対策事業を、荒井知事が先頭に立って指示し、着手していただいたことに北葛城郡選出の県議会議員として感謝しております。
王寺町など、大和川下流域の自治体は、大きな雨が降るたびに、大変な思いをしていることは御承知のとおりです。
大和川総合治水対策事業は、大和川本川の河道整備が県境に「亀の瀬」がある為に限界があることから、昭和57年大和川大水害級の雨に耐えられるようにするために流域24市町村で溜める対策の計画となっていますが、近年の異常気象から、それを超える雨が現実のものとなっていますので、抜本的な治水対策が待ったなしの状況となっています。
国土交通省においては、気候変動の影響により激甚化・頻発化する自然災害等に対応するため、令和2年1月、国土交通大臣を本部長とする国土交通省防災・減災対策本部を設置し、同7月に「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」をとりまとめられ、流域治水の推進など、プロジェクトに基づく施策を実施しておられます。
しかし、それ以降も引き続き災害が発生していることから、プロジェクトを更に充実・強化すべく、本年6月に「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」第2弾をとりまとめられました。
資料を拝見しますと、治水対策については、「あらゆる関係者により流域全体で行う『流域治水』への転換」、「気候変動の影響を反映した治水計画等への見直し」が掲げられ、河川整備事業のほか、田んぼやため池の治水利用、利水ダムの治水活用、下水道管理者による治水対策等も挙げられています。
しかし、本県における市町村単位での取組は、先にも述べましたように、相当のばらつきがあります。
(資料3-1掲示)R3.9 代表質問資料3-1
これは、大和川流域の24市町村における「ためる対策」の取組状況について、県のホームページから作成したものです。
ご覧いただくとお分かりになるかと思いますが、最上流で、かつ最大の流域面積を有する奈良市では、ためる対策の対策率が33.6%です。
更には、平成緊急内水対策事業にも、適地がないとのことで、現在のところ取り組んでおられないようです。
生駒市も対策率が44.3%、平成緊急内水対策事業についても同様です。
一方、下流域の王寺町、河合町、三郷町、磯城郡3町は、いずれも対策率が100%を超えており、平成緊急内水対策事業にも積極的に取り組んでいます。
まさに、危機感の違いがなせる状況であると、考えられます。
進まない市町村にも様々な事情はあるのでしょうが、いざ、大きな水害が発生した場合、つらい思いをするのは、主に下流域の市町村の住民です。県としては、こうした住民の被害を未然に防ぐため、是非ため池治水利用対策に加えて、平成緊急内水対策事業にもしっかりと取り組んで頂きたいと考えております。
また、総務省でも緊急自然災害防止対策事業の大幅拡充・延長が行われて、令和7年度まで事業採択内容の緩和が行われています。
是非とも、流域関係市町村に対して溜める対策が下流を救うことのみならず、様々な理由による地域の浸水対策の解消もできることを積極的に知らせていただき、短期間で溜める対策の効果が望めるように対策をお願い申し上げます。
更に、最近、施業放置林の増加に加え、林地開発も進み、山間地の森林の保水力が低下しているのではないかと心配しています。山間地は先ほど述べました上流域の市町村に多く存在していることから、このような市町村はため池の治水利用や内水対策に加え、山間地の森林の保水力向上対策にも着実に取り組んで頂きたいと思っています。

そこで知事に伺います。

(1)本県では、大和川流域において大和川総合治水対策事業を進めておられますが、市町村の取組にばらつきがある等の問題があり、近年の水害の発生状況を踏まえると、事業実施の加速化が必要であると考えます。
平成緊急内水対策事業及びため池を利用した治水対策事業の進捗状況と、今後の進め方についてお聞かせください。
(2)下流域での浸水被害を軽減するため、流域が広い上流域の山間地において広範な面積を有する森林の保水力向上対策が重要と考えますが、今後の取組方針について伺います。

【知事答弁概要】
森林の保水力向上のためには、森林の適正な管理が必要不可欠です。適正に管理された森林は、表土が多様で豊かな植生に覆われ、また、樹木や地下部の根が健全に生育することから、土砂の流出や崩壊を防止する機能や、雨水を一次的に森林内に貯留する「保水力」による洪水調整機能も高いとされています。
しかし、長引く林業不況などにより、間伐等の必要な管理がなされていない「施業放置林」が全国的に増加しています。本県も例外ではありません。
施業放置林では、林内に光が入らないためササやシダ類等のいわゆる「下層植生」が生育せず、土壌が剥き出しになり、降雨時に土砂が流出するなど、森林の防災機能が低下します。
県では、令和2年度から新たな森林環境管理制度を導入し、森林を恒続林、適正人工林、自然林、天然林の4つの区分へと誘導することを進めています。このうち、恒続林は、多種多様な樹木や下層植生で構成される森林であり、樹木の根が複雑に土壌に入り込み、防災機能が高くなることと期待しております。
この恒続林への誘導については、山間地の集落や道路近傍の施業放置林を対象として、今年度より県森林環境税を財源として、県が事業主体となって実施します。また、施業放置林の適正人工林への誘導については、国の森林環境譲与税を活用して市町村が担っていきます。
このような施業放置林の整備については、対象となる森林の絞り込みや森林所有者への意向調査・調整、境界確認等の業務を、奈良県フォレスターアカデミーで森林管理に関する高度な専門知識と幅広い能力を習得した「奈良県フォレスター」が担うこととしています。
今後、奈良県フォレスターが推進力となり、また市町村等と十分連携しながら、下流域での浸水被害の軽減にも寄与するよう、上流域における適正な森林管理を進めてまいります。

残時間が無くなったため、再度、それぞれの委員会で詳細について再質問を行うことを通告。